猫さんの肝リピドージス〜その1〜
大体隔週で日曜日の夜にやっているZOOMでの勉強会ですが
今年の一回目が一昨日ありまして
今年はちょっと変わったことをやりたいと提案しました。
みんながそれぞれ病院で、それぞれの動物医療雑誌を購読しているのですが
ついつい忙しさにかまけて読むことをサボってしまったりすることがあるみたいでして
それなら、その内容を読んで教え合うみたいな感じにすれば
ちゃんと読むようになるし
情報のインプット・アウトプットにもなるし、いいやん!ってなりました。
で、その期限が来週の日曜日でして
慌てて何が良い材料がないかなと探していたわけです。
今月号のCLINIC NOTEのテーマが『肝疾患の勘どころ』でして
その中に猫さんの肝リピドージスの記事があったので
どうせならそれをブログの記事にメモ帳みたいに残せば
猫さんのご家族向けの情報になるかと思い、何回かに分けて書いてみようかと思います。
猫さんの肝リピドーシスという病気は
猫さんの肝胆道系の疾患の中で最も発生頻度の高い疾患の一つです。
ざっくり言うと
猫さんの肝リピドージスは
『負のエネルギーバランスにより脂質代謝のバランスまで崩れてしまって、肝臓に中性脂肪が蓄積した状態』を指します。
負のエネルギーバランスって何?ってなるかと思うので説明しますと
摂取したエネルギー<消費エネルギーである状態を指します。
食べている量よりも使う量の方が多い状態のことですね。
エネルギーの赤字状態みたいな感じです。
肝リピドージスはこの負のエネルギーバランスになった時に起こるわけですが
これには猫さん特有の事情があります。
そもそも猫さんはわんちゃんや人とは違って、摂取エネルギーが減少しても
消費をうまく押させることができません。
食べている量が少ないから消費するエネルギーも減らしておこう、みたいな
エネルギーの節約が苦手な動物なんですね。
そのため、食欲不振が続いて摂取できる栄養素が不足した状態に陥ってしまうと、すぐに貯蓄が枯渇してしまうわけです。
こういった理由で
負のエネルギーバランスが猫さんの肝リピドーシスの引き金になってしまうと考えられています。
また、猫はそもそもが完全肉食動物であり
進化の過程で必須脂肪酸、必須アミノ酸、ビタミンに依存する脂質代謝/タンパク質代謝となった経緯があります。
つまり、食事から必須脂肪酸・必須アミノ酸・ビタミンを十分に摂取できないと
これらがすぐに欠乏状態になり、脂質代謝・タンパク質代謝の過程がうまく回らなくなるというわけです。
エネルギー欠乏状態でも身体はなんとか血糖値を維持しないといけません。
そこで、様々なホルモンが作用し血糖値を維持しようと働くわけですが
結果として、内臓脂肪から遊離脂肪酸が多量に放出され、肝臓へとやってきます。
肝臓も頑張ってこの脂肪からエネルギーを作ろうとするわけですが
もちろんそれにも限界があり
処理できなくなった脂肪は
肝臓から排泄されるか、肝細胞内に蓄積するかの2択です。
肝臓から排泄するには特殊なタンパク質が必要であり、負のエネルギー状態ではそのタンパク質は十分に補ません。
結果的に、肝臓内に中性脂肪が蓄積してしまい肝臓がどんどんダメージを受けてしまいます。
それが肝リピドージスという病気の概要です。
なんとなくお分りいただけましたでしょうか。
肝リピドージスは命の危険のある恐ろしい疾患です。
猫さんにとって食欲不振が続くことは、怖い病気に繋がる恐れもあるということがわかっていただけると十分です。
次回は肝リピドージスの検査とか治療とかについて簡単に触れていこうかと思います。
それでは、今日はこのへんで失礼いたします。