みなとまちアニマルクリニック(清水区動物医療センター)は、心臓病・腎臓病・麻酔に力を入れている動物病院です。

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薬の処方と休薬

昨日のブログはリンクを貼るばかりで

あんまりきちんと書いておりませんでしたので

今日はみんなで少し考えていくブログにしたいと思います。

皆様は

薬を飲み始めることと、薬を飲むのをやめること

どちらが難しいとお考えになりますでしょうか?

治療をすることとしないこと、と捉えていただいても良いかもしれません。

こういう風に問われると

そりゃあ、薬を飲むことをやめる方が簡単でしょ!というお答えになるかもしれません。

ですが、あくまで個人的な見解ですが

薬を休薬にしたり、減らしていったり、何かの治療をやめたりすることというのは

獣医さんにとっては色々と大変なんですよ、ということについて書いていきたいと思います。

具体的な例を挙げるとわかりやすいので、よく遭遇するパターンで話をさせてもらいます。

心雑音があると1年前に他院で指摘されて

そこからピモベンダンという薬をずっと投薬しているトイプードルさん

レントゲン検査で心臓が大きいと言われて

心臓が悪いから薬をずっと続けなければいけないと言われています。

こういった子がセカンドオピニオンで来られることはよくある光景であります。

こういったケースで、実際にピモベンダンが適応にならないことが多くあります。

(まだ処方するタイミングではない、といった表現が正しいかもしれません。)

確かに、わんちゃんに最も多い循環器疾患は僧帽弁閉鎖不全症ですし

その場合、ステージが進行していくと一定のタイミングでピモベンダンという薬剤は必要になります。

ですが、その必要性を判断するには少なくとも心臓の超音波検査を実施すべきだというのが一般的な見解です。

じゃあ、仮にこの子を検査した結果、まだピモベンダンが必要ない段階の心臓でした、となった時に

『はい、じゃあ今日からもう休薬してもらっていいですよ』と言えるかというと

なかなかそう簡単な問題ではないわけですね。

この場合、いくつもパターンが考えられます。

①ピモベンダンを飲んでいなくても、心臓病が進行していないパターン

②ピモベンダンを飲んでいるから、今の心臓の大きさに留まっていてくれているパターン、休薬しても心臓が大きくならないパターン。

③ピモベンダンを飲んでいるから、今の心臓の大きさに留まっていてくれているパターン、だけど休薬すると心臓が大きくなっちゃうパターン。

他にも無理矢理挙げだしたらいくつか上がると思いますが

概ねこの三つかなと思います。

①と②はピモベンダンを切っても問題にはならないことが多いと思います。

ですが、③の場合は、休薬すると心臓病が悪化してしまう可能性があります。

ピモベンダンというのは、心臓から拍出される血液を増やし、かつ血管を拡張させる効果があるので

心臓に過剰に溜まった血液を効率よく、全身に循環させることのできるお薬です。

そのため、休薬すると血液の循環が悪くなり、場合によっては肺水腫などの重篤な状態に陥ることもあります。

じゃあ、同じようにピモベンダンを飲んでいる①、②、③の子がいたとして

一回の検査だけで、どれに当てはまりますか?っていうのはなかなか判断するのは難しいと思います。

こういう時、僕は正直にお話しするようにしております。

『今現時点の心臓だけで判断するのであれば、ピモベンダンは必要ないと判断できますが

投薬により心臓がよくなった結果、今のように見えているだけかもしれません。

薬を減らして、休薬していくことにチャレンジすることはできると思いますが

もしかしたら悪化する可能性もあります。』

と、こんな感じです。

休薬するのってすごく面倒じゃないですか?

場合によっては一ヶ月以上かけて、薬を減らしながら経過観察を行い休薬を図ることもあります。

ピモベンダンは比較的安全性の高い薬剤でありますので

健康な子が飲んだからといって、これといった弊害が起こらないことが多いです。

なので、適応にならない子に処方したとしても、見た目上の問題はほとんど起きないんですね。

つまり、始めるのは簡単なんです。

薬を始めるのは簡単なのに、やめるのは面倒くさいし厄介ですよね。

しかもですね。

動物病院を単純な営利団体として捉えるのであれば

休薬させることにはあまりメリットはないわけなんですね。

薬の処方量が減ると、売り上げは下がりますし

しかも、休薬を図る過程で悪化してしまうかもしれないというリスクもある。

わざわざリスクを取って、売り上げを下げにいっているわけですから

普通に考えれば、意味がわかりません。

たぶん、飲んでいても効いているか効いていないかわからないけど、売り上げにはなるし、休薬もリスクがあるしまあいっか。

ってなる獣医さんも少なくないように思います。

もし、休薬を目指す過程で悪化したりすれば、患者様のご家族に責められちゃうというリスクもありますしね。

そこまでして休薬を目指さないといけないのか?って話になるわけですが

個人的な意見では

飲まないでいいんだったら薬なんて飲まないほうが身体にとって良いと思いますし

経済的な負担や、投薬をするというご家族の負担にもなりますし

やめられるんだったら僕はやめたいなって思ってしまいます。

加えて、最低限の薬の処方で内科的に管理できる獣医師のほうが内科医としてカッコイイと僕は思っているのもあります。

治ればいいやって感じで、数打ちゃ当たる方式で処方するより

ピンポイントだけ一箇所だけ攻めて治してしまう先生のほうがスマートじゃないですか?

とはいうものの

望月もアメブロのほうで書いておりましたが (https://ameblo.jp/minatomati9582/entry-12768989027.html)

そういった休薬をしていくために思考を巡らせること、なんかには対価は発生しないわけで

どうしても薬自体、みたいな『物』に値段はついてしまうのが現実なんですね。

なので

内科的な管理が上手になればなるほど余計な薬は処方しなくなり

結果として、売り上げは上がりにくくなるという事態になり

患者様の数は増えるので混雑は避けられない

というよくわからない現象が起こるのでしょう。

それでも、動物とそのご家族にとって一番良い選択を模索し続けていく

という今のやり方を変えるつもりはないですし

それを続けていれば、時間はかかるかもしれませんが

最終的に良い形に繋がるのではないかなと考えています。

良い動物病院ってどういう病院なんでしょうね。

今日はこんへんで失礼いたします。

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